服好きな大学生の僕の手記。

「いつか、嘘が本当になることを願って…」(日記4月)

『友情を哲学する』

 

僕は昔から友人関係で人格を形成してきた人間である。

BUMP OF CHICKENを好きになったのも、友達のウォークマンを借りたからだし、軽音楽部に入ったのも友達に誘われてからだし、アニメにハマったのは友達が気軽にあそんでくれなくなったからです。

友情は本当に大切だと思います。人間関係にはどんなものにも友情が付きまとうと思っている。恋人だって愛情だけではないし、上司にだって家族だって友情は成立するものだと思っています。フーコーだってそういってます。

この本ではマンガの登場人物の友情感を哲学者の考える友情論と照らし合わせています。例えばニーチェならナルトとサスケ、アリストテレスならキングダムの信と漂など。僕が特に好きだったのは、ハンターハンターのキルアとゴンの関係をカント的な友情論で語っている所です。

キメラアント編で王宮に突入した後、ピトーを前に冷静さを失ったゴンがキルアに対して、

「キルアはいいよね。関係ないから」

と冷たく言い放つゴンに対してのキルアの感情を表した分が特によくて、

「キルアは硬直し、心が引き裂かれる。あるいは、いっその事ごめんと謝ってしまいたかったかもしれない。それでも激情に駆られたゴンの自立性を取り戻す為に、彼は言い放つ」

ここが良い。

カント的な友情とは、自立性を重んじるという友情の形なのですが、正にキルアとゴンにピッタリです。

彼らの友情は仲良しこよしではなく、人によってはドライに見えるほどです。でも、ゴンがゴンであるために、また、キルアがキルアである為に二人はお互いを尊重し合う。これは愛だけではなく、尊敬を含んだ友情なのです。

アリストテレス的な友情感は友人を「もう一人の自分」と捉えている訳ですが、カントは違う。カントは友人を自律的他者と捉えており、その他者を観測する事でより自分という存在を認識し合える、他者への興味を深める事を前提とした考えなのです。

『推しの子 第1話-Mother and Children-』※ネタバレあり

 

もう世間で話題になりまくっているので今更自分が書くような内容は無いですが、やっぱり推しの子は面白いですね。

アニメ一話は”この作品の魅力を伝えたい”という気概に満ちていた。

僕は特に終盤のオタクに刺されるシーンが好きです。アイドルのアイがファンを欺いて子どもを作り、報復の為に殺されてしまうというシーンなのですが、彼女の台詞が良い。

「心の底から愛してるって言ってみたくて、愛してるって嘘を振りまいてきた。私なんてもともと無責任で、純粋じゃないし、ずるくて汚いし、人を愛するってよく分からないから」
「私は代わりに、みんなが喜んでくれるような綺麗な嘘をついてきた」

「いつか、嘘が本当になることを願って…頑張って努力して、全力で嘘をついてたよ、私にとって嘘は愛…私なりのやり方で、愛を伝えてたつもりだよ」

「君達のことを愛せてたかは分からないけど、愛したいと思いながら愛の歌を歌ってたよ」
「いつかそれが、本当になることを願って」

「今だって、君のこと愛したいって思ってる」

推しの子の魅力は、サスペンス、転生、アイドル、スポコンなどただのアイドルアニメとは違うジャンルごちゃまぜな所や、二転三転する魅力的な展開かとは思いますが、僕はとにかくアニメ一話のこのシーンが好きで、星野アイというキャラクターが特に素晴らしいと思っている。

 

僕がまだ学生時代にアイドルについての記事を書いたことがあります。(もう少ししたら非公開にします。)

今見ると、かなり尖っているというか感情的に書いたな~とは思いますが、これは当時読んでいたコラムの影響になります。本当に申し訳ありません。

でも考え方は当時とあまり変わってないなとも思います。

 

推しの子の星野アイは、例え裏でどんなに性格が悪かろうが無責任だろうがファンの理想とかけ離れた事をしていようが、ファンの前では決してそれを見せないアイドルとしての美学を持っています。

なぜならアイの理想のアイドルとは、ファンの期待を裏切らない人間だからです。

彼女がファンに見せる言動に本音はありません。

たしかにそれは嘘であり、しかし同時に、彼女がファンに与えられる唯一の愛でもあるのです。

 

僕は嘘、偽物、贋作が、誰かの中では本物以上の美しさを持つのが大好きです。

Fate/stay night-Unlimited Blade Works-」での主人公 衛宮士郎の台詞を想起しますね。 

「お前は正しい…俺の想いは偽物だ。けど、美しいと感じたんだ。」

「自分のことより他人が大切なんてのは偽善だと分かっている。それでも…それでもそう生きられたのならどんなにいいだろうと憧れた。」

「俺の人生が紛い物でも、誰もが幸せであって欲しいという願いは美しいもののはずだ。」

自分が贋作だとわかっていながら、自分の作り上げたものは理想だけの綺麗ごとわかっていながら、それでもそうなろうと信じる願いだけは本物だと信じているのです。

どれだけ摩耗しようと、何度間違っているとなじられようと、幾度も無意味な事だと理解しようと、結局は何も変わらない。あの時抱いた理想の輝きは変わらない。
自分の理想は歪んでいるのだと、とうの昔に既に気づいていても、歩いてきた道を正しいと信じる事で、あらゆる悲劇を無意味なものにしない為に、それでもユメを追いかける。

その生き様には星野アイに通じるところがあります。

この世には真実よりも大切な何かがきっとある。

星野アイはの言葉は確かに嘘なのかもしれない。オタク達が見た夢は虚構の産物なのかもしれない。

それでも彼女のファンの事を心の底から愛したいという想いは、誰も侵す事の出来ない本物だから、彼女は愛してると嘘をつき続けるのです。

いつかそれが本当になる事を願って。

「嘘はとびきりの愛なんだよ? 」 

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